阿武隈山地 日帰り6山
バリエーションコース
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アクセス・コースタイム
2018年8月14日(火)~17日(金) 野宿
8月14日(火)【1日目】
電車:高砂駅[4:45始発]-(上野駅経由)-東京駅[5:20着]
東京駅[6:12始発 新幹線つばさ 山形新庄行き]-
-郡山駅[7:30着] ここで磐越東線の列車を待つ
郡山駅[8:00着]-船引駅[8:28着] 山田さんと合流
(乗4430円+新幹線3680円)
車 :船引駅[8:35発]-口太山登山口駐車場[9:25着]
「口太山」842.3m
徒歩:駐車場[9:30出]-キャンプ場[9:40着]-
-猿滑りの滝[9:50着]-乳子岩[9:55着]-
-猿の首取[10:10着]-口太山山頂[10:25着/10:40出]-
-キャンプ場[11:05着]-駐車場[11:15着]
車 :駐車場[11:25発]-堀切口登山口[12:10着]
「女神山」599.3m
徒歩:堀切口登山口[12:20出]-林道横断[12:38着]-
-月館の分岐[12:55着]-丸太のベンチ[13:00着/13:05出]-
-女神山山頂[13:15着(昼飯)13:43出]-
-月館の分岐[13:55着]-林道 月館登山口[14:00着]-
-林道分岐[14:20着]-堀切口登山口[14:35着]-
車 :堀切登山口駐車場[14:40発]-霊山紅彩館 日帰り入浴[15:00着]
霊山紅彩館[16:20発]-栗和田家[17:00着]
・盆踊り・青年会交流・打上げ
・栗和田家に宿泊
8月15日(水)【2日目】
「花塚山」918.2m
車 :栗和田家[8:40発]-花塚山登山口駐車場[10:10着]
徒歩:花塚山登山口駐車場[10:25出]-放鹿神社[10:35着]-
-尾根[11:22着]-花塚山山頂[11:35着/11:48出]-
-花塚台[12:00着]-北峰[12:20着]-
-竪岩[12:30着]-分岐[12:40着]-
-放鹿神社[13:13着]-花塚山登山口駐車場[13:20着]
車 :花塚山登山口駐車場[13:25発]-
・山木屋で蕎麦とシャモの親子丼で昼食・
-田沢登山口[15:40着]
「日山」1057.7m
徒歩:田沢登山口[15:45出]-御神水[15:58着]-
-日山山頂[15:30着/15:50出]-
-御神水[17:08着]-田沢登山口[17:17着]
車 :田沢登山口[17:25発]-名目津温泉 日帰り入浴[17:45着]
・名目津温泉 日帰り入浴 500円
名目津温泉[1845:発]-大越駅[19:00着]
・大越駅の駅前で野宿
8月16日(木)【3日目】
「大滝根山」1192.1m
車 :大越駅[6:10発]-小松さんの画廊[6:50着(見学)7:35出]-
-大滝根山登山口[7:45着]
徒歩:林道終点 登山口[8:00着]-賽の河原[8:13着]-
-大滝根山山頂[9:05着/9:15出]-
-鉄塔[9:21着]-日山権現分岐[9:25着]-
-日山権現[9:39着]-賽の河原[9:55着]-
-登山口[10:10着]
車 :登山口[10:10発]-入水鍾乳洞[10:35着(観光)]
車 :入水鍾乳洞[12:25発]-星の村の日帰り温泉 入浴[12:30着]
・星の村の日帰り入浴 400円 割引後200円
車 :星の村の日帰り温泉[13:15発]-
-あぶくま鍾乳洞[13:45着(観光)]
・入水鍾乳洞を探検
・あぶくま鍾乳洞を見学
車 :あぶくま鍾乳洞[15:30発]-市民の森の家[17:00着]
・市民の森のキャンプ場の野宿
8月17日(金)【4日目】
「宇津峰」676.7m
徒歩:市民の森[6:25出]-小影広場[6:50着]-
-宇津峰山頂[6:08着/7:57出]-
-林道[8:08着]-市民の森[8:27着]
車 :市民の森[9:00発]-のんびり温泉 日帰り入浴[10:00着]
・のんびり温泉 日帰り入浴 600円
車 :のんびり温泉[12:55発]-(郡山南IC)-岩槻駅[16:00着]
ここで山田さんと別れる
電車:岩槻駅[16:13発]-(春日部駅・北千住駅経由)-
-高砂駅[17:20着](定期券+515円)
【はじめに】
昨年、怪我をして行かなかった「阿武隈山魂」の山に、相棒 山田さんと行ってきた。
今回は、山行と言うより谷旅であった。
それと言うもの、山田さんが震災前に、野宿の旅の途中一晩泊めてもらった栗和田家に泊めてもらい盆踊りや青年会の飲み会に参加したり、有名な鍾乳洞を観光したりと、山以外も計画されているからだ。
そして、何よりも旅らしくなったのは、栗和田家に泊まった晩の盆踊りだ。
2時間ぶっづけで踊り通し、MVPのトロフィーをもらったことだ。
ひとりだけ、ちびまる子ちゃんの仮装をしたのだから、目立たないわけがない。
「栗和田家の皆さん、ありがとうございました。」
そして、もう一つの旅の感動は、「入水鍾乳洞」と「あぶくま鍾乳洞」。
ここは楽しい。二人で山椒魚になってはしゃぎ、「滝根御殿」には感動した。
社会的な勉強をしたのも、今回の旅の記憶に残っている。
原発事故による放射能汚染で、人が誰も住まなくなった「浪江町」の実際を見たことだ。
テレビでは流れない映像を実際に目にして、事故の恐ろしさを直に感じた旅だった。
メインの山はどこも低山で、数時間で山頂に到達するが、酷暑の中、脱水症状になりそうなくらい、暑かった。
事実、2つ目の「女神山」では、山田さん珍しくバテてしまった。
「富士山」が見える最北の山「花塚山」では、今の時期、やはり富士山は拝めなかった。
それでも、「阿武隈山魂」のいくつかを楽しむことができ、最高の旅であった。
8月14日(火)【1日目】
今年は酷暑で、且つ、台風がいくつも発生し、天気予報はあてにはならなかった。
直前にはうちの洗濯機が突然壊れ、出発の前日に入荷したため、夜遅くセットすることになった。
深夜0時に寝て、翌朝は4時起き。
なんとか始発の上野行きに乗れたが睡眠不足は否めない。
お盆の期間は新幹線も満席だろうと思い、東京駅で始発の山形新幹線つばさの自由席の列に並ぶも、期待を大きく裏切られ、ガラガラだった。
上野駅を通過してもまだ空席は埋まらず、結局、早起きした意味がなかったことにがっかりした。
途中、日光、那須の山々を眺め、新幹線での移動を楽しむ。
郡山駅で降り磐越東線の乗り換えるが、接続は悪く、30分後の発車である。
時間つぶしに駅構内の観光案内のポスターなどを見て回る。
磐越東線はディーゼル車の2両編成、電化はされていない。
電車は田んぼの香り漂う里山の間を潜り抜け、30分程で「船引駅」に着いた。
相棒、山田さんと駅前で待ち合わせすることになっている。
ホームに着き山田さんを探す。
再開の挨拶もそこそこに、早速、山田さんの愛車2CVを走らせる。
エアコンがない2CVには、前回同様、江戸風鈴が吊り下げられている。
風情で暑さを癒やす狙いだが、現実、暑いものは暑い。
屋根の幌を開け、風を全開で取り入れるが、入ってくる風は東北といえども熱風だった。
セブンイレブンに飛び込み、事前に登録しておいた車の保険「ワンデー保険」の支払をすませる。
1日500円、4日間で2000円である。
「口太山」842.3m
国道349号を北上すること50分、9時30分に「口太山(くちぶとやま)」の登山口の林道終点に到着した。
天気は晴れ。風は微風。
駐車場には2CV以外、車はない。
未舗装の林道を2~3分歩くと最後の民家がある。人のいる気配はない。
さらに7分程で草原のキャンプ場に着く。
ここには案内板の他、水場とベンチ、そして、孟宗竹で作られた鹿威し(ししおどし)が風流な音をたてていた。
沢沿いに杉林の中を10分程歩くと、沢の向こう側に「猿滑りノ滝」が見える。
普通の滝と違って岩が逆層になっている。
その先から山路になる。
左に曲がると尾根に沿った路になる。
クヌギやナラ、クリやツツジが生い茂る明るい斜面だ。
今回の山行は、とにかく蒸暑かった。
4日目は前線影響でとんでもない強風だったが、前半3日間は、とにかく蒸し暑く、普段の2倍以上汗をかいた。
水分補給が重要だと思い、レモネードの素を持参した。これが正解だった。
この日、「女神山」でばてた山田さんも、翌日から水筒にポカリを混ぜて自己防衛していた。
山田さんがさっそく山のキノコを発見する。
しかし、今回は採らない。放射能が濃縮されているという理由だ。
「猿滑りノ滝」から3分で「乳子岩」分岐に着く。
見に行くと、大岩に、見事にきれいな四角い穴が開いている。自然が作った穴だ。
昔、「山陰中納言」が「口太山」さしかかったところで、大猿に化けた山賊が襲いかかった。
その時、白い鹿が加勢して助かったという伝説があり、その時、猿の首を取った場所が「猿ノ首取り」という露岩で、「山陰中納言」が逃げ込んだ岩穴が「乳子岩」、猿が落ちた滝が「猿滑りノ滝」だと言うそうだ。
更に明るい尾根を歩くこと10分「猿ノ首取り」を通過する。
その先は、「迷い平」の標識が立っている。それほど迷いそうではない。
小さいコルを超え、ブナも加わった広葉樹林の林を南西に曲がると山頂は近い。
10時25分、「口太山」842.6m山頂に到着した。
山頂は広くベンチが3台、木製の山名柱が立っている。
三角点の石柱も埋まっている。
西に向かって黒御影石で作った方位盤がある。
遠くが霞んでいるものの西側の展望が開けている。
「安達太良山」「吾妻山」が薄っすらと見える。
手前は「二本松」の市内だ。
右手に次に登る「女神山」も見える。
二人で独占している山頂で東北の山を堪能していると、キャンプ場にあった鹿威しの「コーン」と風情ある音を響かせた。その音を聞いて、二人で笑いがとまらなかった。
下りは「石尊神社コース」にする。
ツツジが多い路を下るとすぐに大岩が現れ、下には小さい鳥居が建っている。
露岩交じりの急な路が続く。
クヌギの他にアカマツ、モミジ、クマザサが多い。
25分程でキャンプ場に戻ってきた。
ここでいつもの山田話が始まる。暑いから、オレにここの水場で行水したどうだと。
林道を下ると、一人の登山者が登ってきた。
こんなところで登山者に会うなんて。
山田さん曰く、「口太山」は「奥多摩」の「川苔山」と呼ばれ人気があるのだと。
本当か?
駐車場に戻り、次の山に向かって2CVを走らせる。
途中、「川俣町」のスーパー「ヨークベニマル」で昼飯の買い出し。
今日のお昼は、豪華に「にぎり寿司」にした。
「女神山」599.3m
国道349号線から114号線に曲がり、神社の「十二社」の標識を北の県道に入る。
数分走ったところに「堀切口登山口」がある。
草生した駐車場に2CVを停め、12時20分登り始める。
ガイドブックの地図とは違って、小尾根沿いに登るルートを取った。
実際、ガイドブックの場所には、登山口の標識はなかった。
新しいガードパイプの柵が設置された。
新しい路を進むが、クズやシノが生い茂り、これが本当のコースかと疑いたくなった。
「口太山」と変わらず蒸し暑い。
杉林の路に変わると、ガイドブックに載っている「休んでみっせ展望台」に着く。
ここで汗を拭く。
南の展望が開け、さっき登ってきた「口太山」が見える。
登山口から15分程で舗装された林道を通過する。
ここに車が1台駐車していた。
持ち主は、この先の路ですれ違う地元のお兄さんで、短パンにサンダル姿だった。
登山口には、「女神山登山口」の標識と登山ポストがあった。
アカマツの多い路で、緩やかな登りが続く。
地図を見ながら進むが、下山に使う「月館登山口」への分岐が見つからない。
おかしいと思っていたら、地図より100m先、林道から15分程登ったところだった。
周辺は杉林で、標識も立っている。
この先で山田さんがバテたと声を上げた。
この蒸暑さと、発汗。真水では水分補給のせいか。
分岐から5分したところに、ちょうど路が広がってベンチが置かれた場所がある。
ここで一本取る。
しかし、ちょうど良いところにベンチがあるものだ。
ここは、南側の展望が良い。
体調を整え10分程進むと、石の祠が3つ現れる。その先が山頂である。
13時15分、「女神山」599.4m山頂に到着した。
ここは、南西の展望が良い。
遠くには「安達太良山」が薄っすらと見える。
左手には、さっき登ってきた「口太山」が見える。
三角点の石柱が埋まっている。
山頂の石の上に座り、昼飯のにぎり寿司を食する。
山頂で寿司を食べるなんて、最高の贅沢。
嬉しくて笑いが止まらない。
この山の名は、小手(おて)郷(今の川俣町と月舘町)に織物を伝えたと言われる小手姫伝説からきている。
小手姫は崇峻天皇の妃で、蘇我馬子の乱の後、東北に落ち延びた息子の後を追ってこの地まで来たという。
しかし、息子とは会うことができないまま、土地の人々に養蚕と絹織物の技術を教え、その一生をこの地で過ごし、遺体は女神山に葬ったといわれている。
今でも「女神山」には山桑が点在し、字「本内」の上あたりに『堂平』には姫が住んだといわれるその跡が残っているという。
小手姫は小手郷に絹織物を伝えた先人であり、その供養の山が「女神山」というわけだ。
山頂の祠にお参りし、下山にかかる。
10分で「月館への分岐」に着く。ここを左(東)へ曲がる。
すぐに湧き水の溜りがある。
杉林の中を下ると、8分程で舗装された林道に出る。
ここで勘違いをして、「月館登山口」だと思い込んでしまった。
登り始めた「堀切登山口」に向かうつもりが、さっき車が1台駐車していた林道を歩いてしまった。
しかし、これが逆に良かった。
栗和田さん家に向かう時間が迫っていたので、結果、エスケープした形で時間短縮ができたからだ。
林道から「休んでみっせ展望台」を通過し、2CVを停めた「堀切登山口」に14時35分戻ってきた。
駐車場に戻り、栗和田家に向かう前に、ひとっ風呂浴びることにした。
ネットで調べ、「りょうぜん紅彩館」に向かう。
今回、登る予定にはなっていないが、「霊山(りょうぜん)」の南の麓にある市営の施設である。
日帰り入浴は大人400円。
但し、お湯は温泉ではない。露天風呂もない。
ロビーには、お冷が無料で飲める。
「霊山」の山の模型が飾ってあり、岩が特徴的な山容が良くわかる。
「りょうぜん紅彩館」を出て2CVに乗り込むと同時に夕立が来た。
山で、この雨に遇わなくてよかった。
これから栗和田さん家に向かうのだが、カーナビに住所を登録できない。
仕方なく、丸森町役場を目的地にして2CVを走らせる。
役場近くで、雨は上がった。
栗和田さんに電話し、国道113号線を南下するよう道案内してもらう。
奥さんが家の前に立っていてくれて、何とかたどり着けた。
改めて居間で挨拶をし、夕飯をご馳走になる。
山田さんが栗和田家にご厄介になった8年前の話しに花が咲く。
お父さん曰く、盆踊り、青年会の飲み会の後、近隣の倉庫の軒下に野宿するという山田さんに対し、「そんなところに寝てもらっては困る。うちに来い。」と言ったと話す。
それから、どこの誰だか知らない人を泊めるのだから住所を書いてもらったとも。
その時、「泊めてもらうだけでいいですから。」と言ってたのに、ちゃっかり座布団を引っ張り出して、寝ていたと、お父さんが笑って話してくれた。
19時になり、いよいよ盆踊りに参戦することにする。
山田さんは、お決まりの浴衣姿に。そして自分は山の格好のまま、と思っていたら、お母さんから、『仮装するか?ちびまる子ちゃんの服があるよ。』と。
酒の勢いと、自分を知らない人ばかりだからといいう気持ちとで、それに応じることにする。
真っ赤なスカートに、白いブラウス、小学生が被る黄色い帽子。そして、サングラス。
このサングラスには、白目にあたるところに、白いテープが張ってあり、真ん丸目玉に見せるようになっている。うまいこと考えたなと思った。
そんな恰好で盆踊り会場に向かう。周りの人の一歩引いた雰囲気を感じ、少し酔いが醒める。
さて、盆踊りは、宮城県の定番「相馬盆唄」。「ハア~♪イヨ~♪今年や豊年だよ・・・♪」
小学校のころ、実家の山梨で踊ったきり、40年以上盆踊りなど踊ったことなどない。
まずは振りを覚えるのが心配だった。
しかし、それほど複雑な振りではなく、すぐに覚えられた。
さらに、自分の盆踊りのイメージでは、いろいろな曲が掛かり、その都度、振りが違ってたので、覚えるのが大変だなと思っていた。
しかし、それはいい意味で違っていた。
「相馬盆唄」オンリー。それ以外、ない。
5分程踊って、それを悟った時、このまま、2時間踊り続けるのか?と逆に心配になった。
こちらの盆踊りは、2時間ぶっ通しで踊り続けて、最後に表彰式をするのだと言う。
さて、山登りの体力で、2時間はあっという間に過ぎ。ラストは拍手でフィナーレする。
そして賞の発表が始まるが、その前に、抽選会の発表があった。
私は3番。山田さんは2番。
数名が呼ばれた後、なんと3番が当たってしまった。商品は「殺虫機」。
次に呼ばれたのが、2番山田さん。当たった商品は「ドローン」だった。
次は特別賞の発表。
なんとなんと、私が指名されたのだ。ちびまる子ちゃんの仮装したからだ。
短冊に私の名前が書かれたトロフィーと、商品は「高圧洗浄機」だった。
嬉しかった!
皆さんの前で「東京から来て、栗和田さんのところにご厄介になってま~す」と挨拶する。
戻って、青年会の慰労会に参戦した。
賞を頂いたので、仮装のまま参戦した。
山田さんは、8年前のお礼で、自社の一升瓶を差し入れた。
若い会長が飲み会を盛り上げ、とても楽しい飲み会だった。
栗和田さんのお父さんが、明日は山登りだからと、中座を勧め、皆さんと別れた。
栗和田家に戻り、一息と居間に座ると、お茶代わりにビールが出された。
盆踊りやら、原発やら、山田さんとの出合いやら。話しの話題は尽きない。
ついでに、慰労会に参加していた青年会のメンバーで近所の新聞屋のお兄さんと、その従弟が、家の鍵を掛けられたと栗和田家にやってきて、一杯飲み始めた。
それから、山田さんの2CVの話で盛り上がって、結局布団に入ったのは、日付が変わった1時過ぎだった。
しかし、楽しい栗和田家だ。
8月15日(水)【2日目】
朝、庭で栗和田家の皆さんと一緒に記念写真を撮って、出発した。
今日も晴れ。お父さんに教わった工業団地の中を突っ切る道を南下する。
国道115号線に合流したら、西に向かい、無料の自動車専用道で「霊山インター」に向かう。
この道路は「相馬福島道路」という名称。復興支援道路で今年3月に開通したばかりだった。
この道路を高速で飛ばしたら、アクセルとクラッチの調子が悪くなった。
後で分かったが、エンジンがオーバーヒート気味だったらしい。
やはり2CVは、高速で飛ばす車ではない。
「霊山インター」を出て、国道349号線を南下し、川又町で国道114号線に入る。
舗装された道を登山口まで走らせる。
「花塚の里」と言う場所から、右の林道に入り、駐車場に2CVを停める。
先に八王子ナンバーの軽と、林道終点に世田谷ナンバーの軽が止まっていた。
山田さん曰く、「花塚山は、奥多摩の鷹ノ巣山と呼ばれ、人気の山なんだ。」と。(笑)
「花塚山」918.2m
10時25分、駐車場を出発する。
今日も蒸し暑い。風はほとんどない。
昨日、ばてた山田さんのことを思い、スタートはゆっくり歩き始める。
林道終点からは、松の林になり、「放鹿山(ほうろくさん)神社」の参道の趣だ。
砂利道を進むと、左手に長い滑り台が見えた。この暑さ、人はいない。
次に、石の鳥居。そして10分程で神社に着いた。
神社の手前にはトイレと案内板がある。
案内板によると、登りで使うコースは「探勝路2号線」。
北峰経由で下りに使う予定のコースが「探勝路3号線」だ。
神社の右手が2号線の登山口になっている。杉林の暗い路から始まる。
アカマツの林に変わると、早速、花崗岩の大きな露岩が表れる。
この山は、露岩が多く、とても面白い山だ。途中、石仏もあった。
その先、鎖が掛かった露岩があるが危険ではない。
周囲は広葉樹林が多くなる。蝉の声が鳴り響く。
標高700mあたりに「御室岩」の標識があり、見に行く。
自然の露岩が積み重なっているが、その一角が四角く空間が開いている。
人が入るに十分な広さがあある。
山田さんが入ろうとした、その時、スズメバチを見つけ慌てて逃げた。
今回、スズメバチを見たのはこれ一回きりだった。
神社から40分、尾根に出る分岐に着く。
尾根を南東に進むと、大きな露岩に現れる。
「松ノ木岩」と標識があった。だが、松は生えていない。
尾根を進むと、山頂の手前に「富士見岩」と標識があった。
かつて「日山(ひやま)」が、富士山が見える最北の山と言われてきたが、今は、この「花塚山」が「日山」にとってかわった。
しかし、今日は霞んで遠くは見えない。冬の条件の良い時でないと難しいだろう。
尾根に出て10分程で、山頂が見えてきた。
11時36分、「花塚山」918.5m山頂に到着した。
山頂は樹に囲まれているが、西側の一角に岩があり、そこから西側の眺望が開けている。
霞んでいて遠くの山は認識できないが、左から「日山」「移ヶ岳」「麓山」「口太山」が望めた。
10分程、山座同定を楽しみ、北峰へ向かう。
分岐に戻る途中、「松ノ木岩」を反対から見下ろした時、この岩の名前が分かった。
平たい岩が大岩の上でずれて、斜めにはみ出している。
きっと、門被りの松のイメージに似ていることから「松ノ木岩」と名付けたのではないだろうか。
この付近で男女の登山者とすれ違った。
分岐を通過するとすぐに、6畳ぐらい広い大岩のテラスに出る。
「花塚台」と言うらしい。ここからも西側の眺望が良い。
岩のテラスの先には展望台があるが、壊れているのか、立入禁止になっている。
登れたとしても樹が生い茂り、展望は望めないだろう。
7分程歩くと「峠の森自然公園」と「飯樋」を結ぶ峠に着く。
道標があるのですぐわかる。
さらに7分程進むと「北峰」の東屋に着く。
ここも、立入禁止だ。やはり、眺望はない。
「北峰」から北西に下ると、道標のある「堅石」と「峠の森」の分岐に着く。
ここは、「堅石」へ下る。
少しすると、急な下りになる。
急な下りの途中で、突如、明るく開けたところに出る。
ここが、「堅石」だ。
ガイドブックには「モアイ象」とあるが、自然が創った『だるま落とし』が一番近い表現だと思う。
圧巻である。春ならヒトリシズカが咲くらしい。
さらに雑木林を下り、尾根に戻ると道標があるので左に折れ、さらに下る。
「北峰」から下ること約20分、ようやくトラバース路の分岐に出る。ここにも道標がある。
沢は見えないが音を聞きながらトラバースの路を「花塚の里」方方向に進む。
5分で、北峰手前の峠からつながる路との分岐を通過する。
峠方向は「比曽境」だ。ここの沢で顔を洗う。
トラバースの道だから、平坦かと思いきや、小尾根を越えるため登りになり、少々うんざりする。
さらに、いがいにも距離があり、なかなか神社にたどり着かない。
トラバース路を歩くこと20分、またまた東屋があった。
なんとここも立入禁止だった。
アカマツの林を、最後は急な下りを進むと、やっと神社に戻れた。
参道を抜け、13時20分駐車場に戻る。
この時、気付いた。駐車場の前に長い建築現場の様な仮囲いがあることを。
きっと、放射能残土だと思い、標識を見に行くと、正解だった。
その後、仮囲いが目ざとく視界に入るようになった。
3.11以降、この一時保管場所が増えるばかりかと思うと不安になる。
つぎの「日山」を目指し2CVを走らせる。
天気予報では、午後は雷雨だ。実際、空はゴロゴロ鳴っている。
国道114号線を南東に進む。
お昼は、蕎麦がいいと、走りながら探すと、すぐに見つかった。
「語らい処 やまこや」十割蕎麦の店だ。
この地域は、「伊達郡川俣町山木屋(やまこや)」で、その地名から名付けたらしい。
店に入り、券売機を見ると、「川俣シャモの親子丼」が売り切れになっていた。
なぜかというと、店前に「川俣シャモ」と幟が立っていたからだ。
「川俣町」では古くから絹織物で栄え、当時、裕福な機屋の旦那衆が娯楽として「闘鶏」を楽しんでいたらしい。その名残で「川俣町」では軍鶏が飼われることが多く、それが「川俣シャモ」になったと伝えらえている。
売り切れと書いてあるにもかかわらず、山田さんが一言、「1人前ぐらいできませんか。」と聞く。
するとご主人が厨房に行き、1杯だけならと作ってもらえることになった。
こういう時、山田流はすごい。自分の欲望をあきらめないのだから。
親子丼は半分ずつ分け合った。プリプリの「川俣シャモ」は美味しかった。
ざる蕎麦には、冷奴など小鉢がセットだった。蕎麦の香りも良かった。
腹を満たし、また2CVを走らせる。
この国道は「富岡街道」と言うらしいが、走りづければ「浪江町」に行く。
途中、国道399号線・459号線へと入らなければならないが、見落として走りづけてしまった。
「浪江町」は、原発事故の影響をもろに受けた地域だ。
民家は、バリケードが置かれ、住民は移住している。
国道から別れる脇道には、ゲートが置かれ、そこに青いパトライトを付けた車が停まってる。
原発事故により町が、村が廃墟となった状態が目の前にある。
少しショックだった。百聞は一見に如かず。
テレビや新聞より、現場を見るのが一番分かる。
社会科勉強はできたが、30分程時間をロスした。
次の山は「日山」だが、登山口が分からない。
走りながら見つけた「日山登山口」の看板で林道に入ると、終点は牛舎だった。
国道に戻って、やっと探り当て、「日山パークゴルフ場」まで来る。
その先の林道終点が「田沢登山口」だ。
後で調べたら、「日山パークゴルフ場」からも「田沢登山口」と言うらしい。
こちらの方が、鶏舎の臭いが少ないらしい。
「日山」1057.7m
駐車場に2CVを停め、さっそく歩き始める。この時、既に15時45分。
それでも、蒸し暑かった。
砂利敷の林道は、その先で牧場の中を貫通する。
林道なのだが、傾斜はかなりきつい。普通の車では登れないだろう。
牧場に牛の姿はなかった。
10分程歩き、樹木が被ってくると、そこが「御神水」だった。水量は少ない。
近くに、石碑などが立っている。
そこから、擬木丸太でできた段々の山路になる。路幅は広い。
少しすると、路の脇に東屋があった。
今回、いろいろなキノコを見つけた。山田さんが、都度、名前を教えてくれた。
このコースは、なぜか真っ白な「ドクツルタケ」が多かった。
山田さんが、ここを「ドクツルタケ街道」と名付けた。(少しかわいそう)
30分程登った標高900mあたりで、大きな露岩が現れる。
その後も、大岩が点在している。路は緩い登りが続く。
さらに15分程登ると明るく広い山頂に出る。
15時30分「日山」1057.7m山頂に到着した。
左右に鳥居が建っている。なんでも神社が3つほどあるようだ。
広いが樹に囲まれている不思議な空間だ。
左の「日山神社」にお参りし、展望台に登る。
木製で3階建てぐらいの高さがある。
一番上には、展望台に、よくあるごっつい双眼鏡が置かれ、無料で使える。
さっそく山田さんが山座同定を始めるが、夏の霞みが掛かり、待望の富士山はやはり見れなかった。
かつてここは、富士山が見える最北の山だった。今は、「花塚山」に変わったが。
面白かったのは、「大滝根山」の山頂にある、自衛隊の施設だ。
ドーム型の建物が2つ見えた。
また、「大滝根山」の左(東)側の尾根には、大型の風力発電が何基もあって、ぐるぐる回っている。双眼鏡だから見える景色だった。
後で調べたところ、「大滝根山」の北に位置する「桧山」の牧場跡地にある風力発電の風車だった。
その他、ピラミダルな「八溝山」も見えた。
ここで今後のスケジュールを考えた。
天気予報では雷雨の予報。この後は、日帰り温泉と買い出し。
そして野宿する場所の確保が必要だ。
そこで、予定を変更、「日山キャンプ場」を回らず、来た路を下ることにした。
「ドクツルタケ街道」を下り、25分程で駐車場に着いた。
日帰り温泉は、事前に調べた「名目津温泉」に向かった。
登山口からは近く、農道をクネクネ曲がり、10分程で着いた。
たどり着いたが駐車場が一杯で、一番遠い1区画だけ空いていた。
駐車場も小さかったが、お風呂も小さかった。
でも、お客さんの話では、1日100人が入りに来ると言う。
かなりの人気だ。確かに、この日も客は多かった。
入浴は大人500円。ここの泉質はラドンだった。
館内のパネルには、建替え前の建物が写っていた。
昔は木造の湯治場だ。そこ頃、来てみたかった。
さっぱりして2CVに乗り込み、国道349号線を「船引町」へ向かう。
受付の方の話では、スーパーは町まで行かないとないらしい。
ここでも「ヨークベニマル」、夕食のメインは、寿司にした。他に酒なども仕込んだ。
2CVに戻ると、ちょど雨が降り始めた。
次は野宿の場所探しだ。
思案の末、ステーションビバークとした。
どこの駅がいいかと考える。無人駅だったが間違いないだろうと、山田さんの勘が働く。
明日の山が「大滝根山」なので、そこに近い「磐越東線 大越駅」にした。
(駅を翌朝、撮影)
夜8時ごろ、駅前に2CVを停める。あたりは真っ暗。
ダイヤは1時間1本程度の運行のようだ。
帰宅する家族を迎えに来る車が、何台か出たり入ったりする。
そんなことにはお構いなく、駅舎の正面、山田さんと二人、軒下にテントマットを広げ、酒宴を始める。
私は、駅の改装されたばかりのトイレで、山の服をすべて洗濯し、駅舎の端にロープを張り干した。
それを見た山田さんは、げらげら笑ってた。
栗和田家の話で盛り上がり、山田さんは、またまたテンションマックスになった。
酒もなくなり、寝る段になり、駅前は明るすぎると、山田さんは近くの民家の軒下に移住した。
しかし、道路に近いせいもあって、眠れなかったという。
とどめは、ミスチルの曲をガンガンかけながら走る自転車おじさんが現れる。
そこで、夜中、タクシープールの方に再度移住した。
結果、それが正解だった。大きな庇があって、最良の場所だった。
始めからそこにすればよかった。
8月16日(木)【3日目】
朝5時起床。
自動販売機の音であまり眠れなかった。
天気は曇り、予報では午後から雨だ。
コンビニ弁当をお茶で流し込む。
駅前に空き地に、問題発言の手作り看板があった。
なんでも福島県知事は、バイオマス発電を導入して、放射能汚染された土を処分すると、その看板は訴えていた。本当だろうか。
カーナビを「大滝根山」の登山口にセットし、6時、2CVで出発する。
磐越東線に沿って県道を南下し、「上俣駅」の手前から東の山道に入る。
後で楽しむ予定の「あぶくま洞」を通過し、登山口を目指す。
山はガスって、気分も暗くなる。
登山口の近くになって、昨日の二の舞はしないようにと、民家の庭にいたおじさんに登山口を聞く。
おじさんは、どもった口で丁寧に教えてくれた。
その間、山田さんが面白いものを見つけた。
民家の離れに、「絵画展」の看板だ。そこはギャラリーだった。
おじさんは、「じ、時間があれば、み、見ていきませんか。」と、言ってくれた。
「ぜひ」と、二つ返事の山田さん。
山はどうするのかなあ、と思いながら、おじさんについてギャラリーに入った。
入ってすぐ、芳名帳に記帳を求められ、そして名刺を渡された。
その名刺には、「洋画家 小松祝正(のりまさ)」、日本芸術文化協会副会長、日本芸術家連盟副会長の肩書があった。
すごい人なんだ。
(入口の盆栽)
部屋に入ると、大小さまざまな絵がぎっしりと掛かっているではないか。
画風は、シュールリアリティ。山と風景が多かった。
いろいろな絵があって、説明できないが、ザクロの絵は災いを振り払ってくれると説明してくれた。
値段の話になり、自分の絵は1号100万円と言う。
でも、その9割引きでいいよと、山田さんに話したらしい。
自分には、まったく分らない世界。ただただ、絵を眺めるだけだった。
外に出ると、今度は自分が興味をひくものがあった。盆栽だ。
大きな松の老木の盆栽。樹齢、なん百年とも思われた。
盆栽をほめると、今度は庭を見て行けと小松さんに勧められた。
小松さんが見せてくれたのは、岩松だった。それも50~60cmもありそうな大きなものだった。
この大きさまで育つには、300年はかかると言う。
1時間ほど過ぎただろうか、山のことが心配で、二人の話の腰を折る。
丁寧にお礼を言うと、『50メートル先を右に行きなさい』と、教えてくれた。
ありがとうございます。小松さん。
登山口に入る林道はすぐに分かった。
そして、林道に入るとすぐ左手に、廃墟になったホテルがある。
さらに、石ころだらけの林道を登り、わだちが大きくなったので、そこに駐車した。
「大滝根山」1192.1m
山頂を見上げると、しっかりガスが掛かっている。そして小雨が降ってきた。
これでは景色は期待できないと諦める。
草で濡れると予想して、雨具のパンツを履き、8時ちょうど、歩き始める。
途中、立派な標識が立っている。
林道を少し進み、ヘアピンカーブを曲がった先で山路になる。
ガスっているうえに、暗い。沢沿いの路はぬかって滑りやすい。
雨具で余計蒸暑い。
45分程で「賽の河原」に着く。岩の上のお地蔵さんも濡れていた。
そこからは沢と離れる。
斜面は急だったが、雑木林の中、ツツジやシャクナゲなどが多い、雰囲気の良い路だ。
トラロープが掛かった斜面を通過すると、続いて鎖場を6カ所通過する。
樹木が低くなるのと比例し周囲が明るくなり、勾配も緩くなると山頂は近い。
駐車場から約1時間、「大滝根山」1192.1m山頂に到着した。
最初は、「大滝根山峯霊神社」にお参りする。
「大滝根山峯霊神社」は、奈良時代、坂上田村麻呂創建によると伝えられている。
昔から、信仰の山だった。
しかし、現在は三角点のある山頂は、自衛隊に占有され、フェンスから外れた所だけが山頂だ。
次に「梵天岩」方向に向かう。
そこは、フェンスに囲まれながらも、高山植物の咲き誇る、プチお花畑だった。
特に、ナデシコとマツムシソウ、ツジガネニンジン、コオニユリがきれいだった。
他には、リュウキンカ、ネジバナ、ウメバチソウなども咲いていた。
下山は、「仙台平」方向に進み、「日山権現」経由で下ることにした。
自衛隊の建物の脇をとおり、林の中の路に入る。
すぐに、駐屯地への送電線の電柱が立つ場所に出る。
晴れていたら、きっと景色の良い所だ。
周囲には、ギボウシがたくさん咲いていた。
また林に入る。ツツジ、ネズコ、オオカメノキの林は、とてもきれいだ。
唯一、晴れていなかったのが残念だ。
「日山権現」の案内板のところに大岩があった。
その先に標識があり、分岐を右に曲がる。
すぐに砂地の展望台に出る。
下を見下ろすと、廃墟のホテルがガスの中から見えた。
ここも晴れていたら、絶景だろうと思った。
傾斜がきつくなる。そして樹が高くなり、暗い林へと入って行く。
ロープが掛かった斜面を下ると沢に出る。
朝通過した「賽の河原」に合流する。
10時10分、駐車場に戻る。
濡れた雨具を脱ぎ、2CVに乗り込む。
そしてお楽しみの「入水鍾乳洞」に向かった。
途中、「仙台平」キャンプ場を通ったが、客は一人もいなかった。
山田さん曰く、東北のキャンプ場は、どこもガラガラだとか。
「入水鍾乳洞」の駐車場は一杯で、第二駐車場に停めた。
そして、びしょ濡れになると聞いていたので、濡れてもよいTシャツに着替える。
ここはライトは必須だ。山のライトをもって、受付に向かう。
受付でネットから印刷したクーポンを出すと、距離の短いAコース用だと言われ、正規料金でBコースのチケットを買う。1人700円
コインロッカーに不要なものを仕舞うと、また受付に行き、入洞前の注意事項を聞いた。
その説明は以下のとおりだ。
『水温は常時9℃。今の季節なら冷たいと言うより痛いです。』
『胎内くぐりは、頭から入って下さい。』
ヘーと思いながら、いよいよ鍾乳洞に入る。
最初の感想は、「涼しい」「コースは階段などで整備されている」と思ったが、100m程進むと、本当の「入水鍾乳洞」が始まった。
コースには冷たい水が流れている。足を濡らさないわけにはいかない。
諦めて足を水に着ける。と、その瞬間、「冷たッ!」と声をあげたくなる。
少しすると、受付で言われたように痛くなってきた。
このまま最後まで足が持つのだろうかと心配になった。
コースは変化に富み、そして狭い。とにかく狭い。人とすれ違う時は、待つしかない。
その間も足は冷たい水の中。
鍾乳石にいろいろな名前が付けられているが、残念ながら今いちネーミングが合ってない。
ついに「胎内くぐり」まで来た。
どう見てもしゃがんで通過できるような高さではない。
腹ばいになり、頭から突っ込む。シャツがダブダブな人は、ここで一気に全身ずぶ濡れになる。
足だけに留まらず、着ているものまで濡れると、もう低体温症になりそうだ。
その後、一旦は立って歩けるところを通過する。
何千万年も掛けて自然が作った造形を楽しみながら、先を進む。
そしてまた始まった。高さのないところが。
すると後ろにいる山田さんが叫んだ。『サンショウウオだ。』
このとき山田さんは、黄色い海水パンツにグレーのTシャツ。頭には山用のヘッドライト。
その格好で四つん這いになり、狭い鍾乳洞をくぐってくる。
『サンショウウオだ。』と笑いながら。
しかし、よく似ている。2匹のサンショウウオ。二人で大笑いした。
Bコースの終点は、「カボチャ岩」。これは確かにカボチャに似ていた。
その先は、ゲートがあり、ガイド付き添いでないと入れない。
ここで引き返す。この時、足は感覚が失われ、痛いとも思わなくなった。
入ってきたばかりの観光客を見て、「この先が大変なのに・・・」などと心でつぶやく。
出口に近づいた時、ちょっとした事故に遭遇した。
水が湧き出る割れ目にいた親子。その中の小さい娘さんが、「落ちた!」と叫んだ。
とっさにカメラでも落としかと思ったら、その家族の男の子が落ちたのだ。
お母さんが、子供の名前を叫んで、引き上げた。
大きな滝つぼとかではなかったので、大事には至らなかったが、お母さんが『鼻血が出てる』と驚いていた。落っこちたときに鍾乳石に顔をぶつけたんだろう。
かわいそうだったのは、男の子。ビービー泣いていた。
暗いから、足元にステップがないことに気付かなかったようだ。
出口が近づき、蒸暑い下界に戻ると思うと、少し嫌だった。
案の定、扉の外は、サウナ状態。一発でメガネが曇った。
駐車場から受付に上がってくる途中で、流しそうめんの店がある。
中を覗くと、お昼時とあって満席だった。
しかし、その設備がちょっと・・・。
金属製の樋が何本のあって、その前に座って流れてくるそうめんを食べる仕組みだ。
なんだか、ペットに使う自動餌やり機のようだ、と言ったら失礼だろうか。
次は、「入水鍾乳洞」の受付でもらった日帰り入浴の割引券をもって「星の村ふれあい館の日帰り入浴」へ行った。
1人400円のところ、200円で入浴できる。
ここは温泉ではなく、「あぶくまの天然水」で沸かした風呂に、「ブラックシリカ」を入れマイナスイオンが出ると謳っている。
冷えた体を温めたところで、駐車場に戻る。
次なるイベント「あぶくま洞」へと2CVを走らせた。
「あぶくま洞」は、「入水鍾乳洞」より鍾乳洞の規模は大きい。
駐車場も大きい。商売も上手である。
ここでは、ネットの割引券が有効だった。
1人1200円が1000円で入場できる。
行列ができるのか、入口までの通路が長かった。
入洞する直前、雨が降ってきた。
「あぶくま洞」は、「入水鍾乳洞」と違い、足が濡れることはない。
鍾乳石らしい造形を眺めながら、奥へ奥へと進む。
規模が大きいだけに圧巻だ。
但し、あまりに間近に鍾乳石があるため、折られたり傷つけられるらしく、アクリル板で囲まれたところもある。
途中で「探検コース」のゲートがあり、ここはオプションらしい。
追加料金1人200円を払う。
そして「あぶくま洞」最大の見せ場「滝根御殿」に入る。
高さ29mの大空間。そこに様々な鍾乳石があり、また、面白いネーミングがされている。
「観音像」「クリスタルカーテン」「きのこ岩」「あわび貝」「クリスマスツリー」などなど。
時間を忘れる。この場所に来れば自然とそうなる。
パンフレットには、1cm伸びるのに70~100年掛かると書いてある。
自然ってすごい。(感動)
出口を抜けると売店を通過しないと駐車場に行けないルート作りは、TDLと同じだ。
案の定、その手口に引っ掛かり、お土産を買い込む。
駐車場に戻り、今夜の宿探し。
と、その前に昼を食べていない。
途中、1軒そば屋があったが、自分が通過してしまい、結局その後、気の利いた店に出会えないまま、「小野町」のスーパーで買い出しをする。
そこで中学生に聞いた定食屋に向かうも、お盆で休みだった。
仕方なく、コンビニで軽く済ませる。
明日、登る予定の「宇津峰」を目指す。
さて、どこに今宵の宴会場、ならぬ寝床を探すか・・・。
すると山田さんが、『キャンプ場があるじゃん』と叫ぶ。
『東北のキャンプ場は、どこも人がいなくて、いつもただで使えるんだ。』と言う。
そこで、「宇津峰」の西の「市民の森」に向かう。
予想通り、管理員さんはいない。
しかし、地元のお父さんが、猫とおしゃべりしていて、なかなか帰らない。
1時間ほどして、こっちも開き直りキャンプ場の中へ入る。
そこはきれいに整備されたファミリーキャンプ場で、立派な自炊場がある。
今宵は、この自炊小屋に寝袋を広げることにした。
自炊場だから、水道はあるし、床は平らなコンクリート。トイレはすぐ近くにある。
2CVから装備を運び、早速、酒宴を始める。
今夜は、「にぎり寿司」。これで3日連続、寿司だ。
その他、「馬刺し」と「牛タンの燻製」を堪能する。
自炊場から西の空を見ると、夕焼けで雲が茜色に輝いていた。
まだ1日残っているが、今回の旅も楽しかった。良い人に出会ったと、思い出話に耽った。
酔いが回らなうちに、自分は洗濯をする。
この洗濯物が、夜中、突風で吹き飛ばされた。幸い、遠くまで飛ばされず、紛失はしなかった。
美味しい日本酒で、結局4合瓶が2本空いてしまった。
そのほとんどは、山田さんの胃袋に満たされた。
前の晩、「大越駅」で熟睡できなかったので、テンションが上がってきた山田さんをほっておいて、先に寝た。
夜中、台風の影響か、突風が吹き荒れ、食べ終わった食材のパックが風で飛んで、朝、山田さんが回収してまわってた。
風があったので、蚊も来なくて、ラッキーだった。
夜中、山田さんが、我らの会の歌、「三橋美智也」の「いいもんだな故郷は」を歌ってた。
これが会の歌になったのは、2016年の夏、「南会津」に行ったとき決まった。
8月17日(金)【4日目】
快適な自炊場で、快適な目覚め。しかし、風が強い。
昨夜の突風のままだ。
朝食は、コンビニのオムライスだ。
「宇津峰」676.7m
6時半、装備をすべて2CVに積み込み、林道を歩き始める。
林道を20分程歩くと「こかげ広場」に着く。
樹に囲まれ展望のない広場で、ここから尾根沿いの山路を登る。
広葉樹林の中、急な登り出し。しかも風が強い。
半分ほど登ると、露岩の路になる。
7時8分、「宇津峰」676.7m山頂に到着した。
前日までの山と違い、今日は強風のため、遠くまで眺めが良い。
左(東)から、「蓬田岳」「福島空港」の滑走路。その先に「八溝山」
西には「日光の連山」「那須の山々」そして、会津の「二岐山」
山田さんが持参した双眼鏡で眺めてみると、尾根の上の風車が、くるくる回っているのが見えた。
あれは、どこの山だろう。
東屋の向こうがそれらしい平地になっている。しかし、眺望はない。
「雲水峰城跡」と石碑に刻まれていた。
宇津峰山は、山域全体を利用した山城跡で、「星が城」あるいは「雲水峯」の別称がある。
南北朝時代に築かれ、国の史跡に指定されている。
山頂でゆっくりして、8時頃に下山する。
下山ルートは、北側の丸太の階段を下る。
アカマツの多い、良い路だ。
舗装された道に出ると、「馬場平」には向かわず、西に向かい、今朝来た林道に合流する。
8時半、「市民の森」に到着。
これで山登りは終了。
後は、温泉に入って、車で帰るだけ。
事前にネットで調べた「のんびり温泉」を目指しナビをセットする。
1時間ぐらい走り、田んぼが広がる中に看板を見つけた。
田舎風の建物が味がある。
日帰り入浴は、平日1人600円、露天風呂もある。
脱衣場で着替えていると、スーパー露天風呂があることを知り、そっち行く。
しかし、そこは脱衣場が別なので、もう一度ズボンとTシャツを着て、廊下を移動する。
離れの木造の建物で、露天風呂ではあるが、景色はほぼ見られない。
二人の貸し切り、そこはそこで良かったが、上がって大浴場に戻ることにする。
こっちの露天風呂は小さいが、景色は少し良い。
ここでゆっくりと旅の疲れを癒やし、レストラン、と言うより食堂に向かう。
最後は、豪勢にと「蕎麦」と「寄席豆腐」に「馬刺し」。そして「岩魚の塩焼き」。
腹パンパンにして、13時、2CVで出発する。
郡山南インターから東北道に乗る。
その前に、山田さんが靴を買いたいと言いだし、「靴流通センター」はないかとガソリンスタンドで尋ねると、すぐ近くにあった。
行ってみると、ちょうどその日は、55歳以上10%引きの日だった。
56歳の私が山田さんの財布をもって支払いをした。
お盆の後半、金曜日。東北道はそれほど混んではいなかった。
但し、人気の「那須高原サービスエリア」は、予想通り渋滞していたので、他のサービスエリアでトイレ休憩する。
2時間半走って「岩槻インター」で下りる。
山田さんに、東武線の「岩槻駅」まで送ってもらい、駅前で別れた。
【編集後記】
あっという間の4日間。しかし、その中身は盛沢山だった。
書き下ろした時点で、A4 16枚になっていた。
( ^^) _旦~~