大佐飛山
バリエーションコース
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アクセス・コースタイム
2019年3月20日(水)~21日(木・祝) 晴れ テント泊
3月20日(水)
電車:高砂駅[5:10発]-東武線久喜駅[6:12着(JRに乗換)]-
-JR久喜駅[6:18発 宇都宮行き]-宇都宮駅[7:13着]-
-宇都宮駅[7:17発 黒磯行き]-黒磯駅[8:08着]
(定期+東武線590円+JR線1940円)
バス:黒磯駅[関東自動車㈱8:30発 板室温泉行]-穴沢バス停[8:55着]
徒歩:穴沢バス停[9:05出]-光徳寺入口[9:25着]-
-大巻川林道カーブミラー[10:20着/10:30出]-
-948Mポイント[10:55着]-百村山[11:28着/11:55出]-
-三石山[12:39着/12:50出]-サル山[13:50着]-
-那須見台[14:20着/14:40出]-山藤山[15:15着]-
-黒滝山[16:25着]-ベースキャンプ[16:43着](テント泊)
3月21日(木・祝)
-ベースキャンプ[4:25出]-西村山[4:53着]-
-大長山[5:55着]-天空の回廊[6:00着]-
-大佐飛山[7:06着/7:20下山]-天空の回廊[8:31着]-
-大長山[8:35着]-西村山[9:30着]-
-テン場[9:55着(撤収)10:55出]-黒滝山[11:07着]-
-山藤山[11:47着]-サル山[12:35着]-
-三石山[13:00着]-百村山[13:33着/13:40出]-
-大巻川林道カーブミラー[14:19着/14:22出]-
-光徳寺[14:59着]-穴沢バス停[15:24着]
バス:穴沢バス停[関東自動車㈱16:27発 那須塩原駅行]-黒磯駅[16:55着]
電車:黒磯駅[17:14発宇都宮行き]-宇都宮駅[18:07着]-
-宇都宮駅[18:23発 逗子行き]-JR久喜駅[19:20着](東武線に乗換)-
-東武線久喜駅[19:44発]-高砂駅[20:55着]
(定期+JR線1940円+東武線590円)
【はじめに】
我が相棒、山田さんと大佐飛山に行こうと計画したのは、ちょうど1年前だった。
しかし、私の都合が悪くなり、山田さんは一人で行ってしまった。
大佐飛山は、残雪期でないと登れないヤブ山である。
今年は雪が少ないとの情報である。
それでも行きたい気持ちが大きい。
自分の手帳を眺めながら、二日間休めるよう仕事を調整する。
春分の日とその前日が、ポッカリ空いている。
ここぞとばかり有給休暇を使い、大佐飛山行きを決行した。
3月20日(水)
JRの車窓からは、いつもとは違う高原山の東面と、那須岳を同時に眺める。
東武久喜駅でJR線に乗換え、さらに終点 宇都宮駅で黒磯行きに乗り換える。
今日は平日、観光客も少ないだろうから電車はガラガラだと思っていたら、黒磯行きの電車は、サラリーマンと高校生で満員。
空いた席などどこにもなかった。
黒磯駅は、コンビニがあるだけの田舎の駅だった。
駅前のロータリーは工事中で、完成後、綺麗になるようだ。
駅前で板室温泉行きのバスを待つ。
客は自分以外、誰もいない。
バスは北西に真っ直ぐ伸びる道を走る。
正面には、今日、テントを張る予定の黒滝山が雪をまとって見えた。
そして穴沢バス停で降りる。
私が降りると、乗客はゼロになった。天気は晴れ、風はない。
バスを降りた瞬間、強烈な臭いが鼻についた。牛舎だ。
それだけではない。周囲の田圃には、牛糞が撒かれ、どこにいてもこの臭いからは逃れそうもない。
9時、百村山を目指し農道を進む。
強烈な臭いも、そのうち慣れるだろうと自分に言い聞かせ、長丁場の今回の山行を考え、飛ばさずに歩く。
正面に、鴫内山から黒滝山、百村山の稜線が見渡せる。かなり距離がある。
20分ほどで光徳寺に着いた。境内左から杉林に入り込む。いよいよ、登りが始まる。
花粉の時期とあって、ズボンの裾から黄色い粉が舞い立つ。
雪山だからとスポーツタイツを履いてきたが、今日は気温が高く、汗もかきはじめる。
人目がないことを幸いに杉林の中でタイツを脱ぐ。
杉林は檜林へと変わり、次に松林へと変化する。
光徳寺から小一時間で林道に合流する。ここで一本取る。
山の斜面に刻まれた林道は、傷ついた自分の体のようだ。
黒滝山が少し近くになった気がする。
ここから少し林道を歩き、いよいよ山路に入る。
すっかり葉を落とした灌木が、小さな芽をつけている。春は近い。
アップダウンを繰り返し、9時48分、948mのポイントを通過する。
石標は見当たらなかった。
途中、東電の鉄塔と巡視路を通過する。
右手(北側)には、まだ真っ白な那須の連山が見渡せる。
さらに30分歩き、11時半、やっと百村山1085.1mに到着する。
山頂は雪がある。
その下にはカタクリの群生地らしく、「柵の中には入らないで」と看板に書かれていた。
ここでおにぎりを1つ食べる。
ここから徐々に傾斜が増す。夏道と残雪が交互になる。
三石山の手前は少し傾斜がきつい。
そこを登っていると、上から登山者が降りてきた。
挨拶するが、うなづくだけで、登りの私の脇をすり抜け足早に下ってしまった。
この後、下山するまで、誰にも人に会わなかった。
百村山から約45分、12時40分、三石山1257mに到着。
尾根の途中のような山頂で、石標がある。
南の方向は景色がよく、黒磯の市内が見渡せる。
この先は、残雪の尾根になる。スノーシューと登山靴のトレースがある。
ツボ足になりいながらもワカンは使わず歩く。
ところどころ急な斜面がある。
かぜの通り道になった尾根には、雪庇が張り出していた。
いよいよ雪の山になってきた。
三石山から1時間ちょっとで、サル山1467mの山頂に到着。
平坦な山頂で、シラビソや白樺が多い。
この先は平坦になるので、ワカンをつける。
やはり雪の上は、ワカン限る。
この頃から、足の太ももあたりがつるようになった。
照り返しで顔が日に焼けそうだ。サングラスをつける。
次のピークの手前に、「那須見台」と名がついたところがある。
道を外れ登ると、北面が開けた小ピークで、南月山から茶臼岳、朝日岳、三本槍岳が良く見える。
さらに左には流石山、三倉山、その手前には斜面に白い線を引いたような塩那スカイラインが、くっきりと西の男鹿岳に向かって伸びている。
気持ちが良い。
40分ほどで山藤山1588m山頂に着いた。
ここを休まず通過する。
正面には黒滝山が見える。やっとここまできたか。
少しだけ風が出てきた。気温も下がっているようだ。
斜面はきつくなり、時間ばかりかかる。
尾根の東面に張り出した雪庇が大きい。
ここの登りが一番きつかったかもしれない。
1時間10分かかって黒滝山1754.1mの山頂に到着した。
日光の社山に似ている、狭い尾根のピークだ。
南に向いた景色が良い。
緑に色づき始めた田畑、牧草地がはるか向こうまで広がっている。
今は日がななめに差し、オレンジ色のフィルターが掛かって見える。
午前中だったらもっと綺麗に見えるかもしれない。
尾根の上は、少しだけ風が冷たい。
シラビソの森に下り、今夜のテン場を探す。人につかないところが良い。
コースから外れて、樹林帯の中に入る。
雪がしまっていないので、ワカンでも足が沈む。
30mほど樹林帯を進むと開けた場所に出た。
そこをベースキャンプ地と決め、早速足で整地に掛かる。
今回、折畳み式のスコップを担いできた。使えるものか、まずは整地に使ってみる。
プラスチック製なので軽い。が、強度がない。
凍った塊を砕くには無理があるが、ザラザラな雪なら難なく使える。
もう一つ問題が分かった。
使っているうちに、柄の部分のねじ込みが緩んでくる。
ゴムパッキンがあれば、緩みも防止できるかもしれない。
整地が完了し、これも長年愛用しているエスパース(テントの製品名)を広げる。
テントが飛ばされないよう4隅の張り綱を、雪に埋めた枯枝に固定する。
この時、残置しても良い紐を用意しておけば良かった。
翌日気づいたが、カチコチに凍った枯枝を掘り起こすのに、かなり手こずった。
この時の天候は、怖いくらい穏やかだった。
風もなく、気温も低くなく。
月はまん丸、明るくてライトがなくても小用を済ませられた。
今宵の食事は、百均で買った早茹でマカロニとトマトソース。
それとおにぎりの残り。
心配なのはEPIのガスの量だ。
雪を溶かし水を作らねばならないので、果たして足りるだろうか。
一人の食事は寂しいものだ。
ラジオを出し、NHKの気象情報を聴く。
すると、出発前とは違って、低気圧が猛スピードで通過するらしい。
当然風も強くなる。時折、雨も降るらしい。
それを聞いて、明日の行動に躊躇した。
今考えても仕方がないので、すぐに寝ることにし、20時にシュラフに入る。
割と早くにつけた。
しかし、夜中、12時過ぎごろから風が強くなった。
テントをはたく風の音で目が覚める。
月は相変わらず、薄い雲の上から、月明かりを投げてくれていた。
3月21日(木・祝)
まだ暗い3時に目を覚ます。
外は風が強いままだ。さて、今日は登るか、それとも諦めるか考えた。
あきらめて次回また登るとなるとなると、昨日登ってきた7時間コースをまた歩くことになる。
それは勘弁願いたい。
だから出発することを自分自身に言いきかせる。
パクチーラーメンを食べ、ほうじ茶をすする。
4時出発と考えていたが、準備に手間取り、4時20分となった。
4時25分、ライトを付けベースキャンプを出発する。
シラビソの森に入り、昨日、トレースを付けた場所まで戻る。
雪はしまっていて、アイゼンだけで歩行は可能だった。
うっすらと月明かりの中に、誰かが付けたスノーシューのトレースが続いている。
それをアイゼンで追いかける。
時折、強い風が吹くのでフードを被る。
緩やかな雪の斜面を進むこと40分、西村山の山頂に到着した。
そこから長いシラビソの林が続く。
大長山の手前で日が昇った。
樹々の間から登る日の出を眺める。
反対側の雪の斜面が、オレンジ色に輝いている。
西村山から約1時間、5時55分、大長山1866mに到着。
林の中で眺望はない。ここで進行方向を北に変える。
下り気味に進むと林が終わり、一気に視界が開ける。
待ちに待った天空の回廊だ。
なだらかに続く白い尾根。尾根の上だけ樹木がなく、白い帯びが続く。
吹き溜まりになって、所々、雪庇が張り出している。
これを見たかったのだ。
少し立ち止まり、写真を撮る。
尾根は左に曲がり、その先に大佐飛山が見える。
右手には、那須の連山を見渡せる。
尾根に生えるシラビソは、強風に耐えるため、風下にしか枝がない。
自然の強さが分かる光景だ。
天空の回廊は、しばらく続く。
雪は締まっていて、アイゼンでも快適に歩ける。
回廊が終わると、シラビソの林に入る。
緩やかな登りが続く。
左手には、高原山と日光の連山が遠くに見渡せられる。
天気予報通り、小雪が降り始めた。
軽いアップダウン。そして緩い登り。
大長山から1時間ちょっと、7時6分、待ちに待った大佐飛山1908mの山頂に到着した。
山頂は、樹木が多く、眺望は良くない。
しかし、この長い道のりを克服してやっと到達できた山頂は、絵も言えぬ感動だ。
山頂には、3枚の山名板があった。
風は相変わらず強い。小雪も舞って寒くなてきた。
15分ほどで山頂を辞す。
帰りは、少し日差しが差してきた。
その時、日光連山のさらに西側に、会津の山々も見渡せた。
豪雪地帯だけに、ほとんどが真っ白な稜線だ。
標高差がそれほどないため、帰りも同じぐらいの時間が掛かった。
黒滝山の手前で、スノーシューのトレースについていくと、鴫内山に向かいルートに入ってしまった。雪原をトラバースして、朝のトレースに戻る。
山頂から約2時間半、9時55分にベースキャンプ地へ戻った。
バスの時間を考えると、ここを11時には出発したい。
あと1時間、急いでテントを撤収する。
昨日、テントの張り綱を雪の中に埋めたが、突き固めたため、掘り出すのに難儀した。
さらに、到着した頃から雨が降りだし、テントが濡れ始めた。
ビショビショになったテントを丸め、ザックに詰める。
11時少し前、ベースキャンプを後にする。
まだ雨が続くと思い、雨具のズボンを履いたが、黒滝山の下る頃には、青空がのぞくほど天気が回復し、暑くて脱ぐ羽目になった。
雪も、気温の上昇に伴って腐り始め、ツボ足になる。
そこでワカンを付ける。
しかし、この日の天気はめまぐるしかった。
日が差して汗が噴き出すほど暑くなったと思うと、少しすると曇って風が吹き、今度は寒くなる。
体温調節が難しいのが、この季節の山かもしれない。
百村山までの道のりは、標高が下がるほどに暖かくなり、それに合わせ、雪も減る。
サル山の下りでは、熊笹の上の雪が崩れ、雪庇が斜面に落ちていた。
黒滝山を下ること2時間、13時に三石山に着いた。
ここから先には、雪がない。ここでワカンを外す。
ロングランの山行だと分かって入るが、さすが長い。
13時半、百村山に到着。
そして15時、やっと県道に出た。あと20分でバス停に着く。
ただし、ここからしばらく、鼻が曲がるほどの臭いを我慢しなければならない。
疲れた足に臭いの追い討ち。
15時20分、穴沢バス停に到着。
喉が渇いたので自販機でジュースを1本買い一気飲み。
お寺の階段でパッキングを直し、バスを待つ。
バス停から百村山を見上げる。
長かった。
しかし、諦めず、おじけず、山頂を目指して良かったと思った。
【編集後記】
帰ってから、山田さんから電話があった。
『どこか登った?』
『大佐飛山に行ってきた。』
『なんだよ、一緒に行ったのに。』
『ゴメン』
『で、矢筈岳だけど・・』
ま、そんな仲です。私と山田さんは。
( ^^) _旦~~