山行記録 2024年  No.5
4月17日(水)~18(木) 避難小屋泊山行

三岩岳から会津駒ヶ岳 バリエーションコース

アクセス・コースタイム
 
4/17(水) 曇り
電車:京成高砂駅[4:55発]-関屋・南栗橋・下今市乗換え-
   -新藤原駅[8:09着/8:17発]-会津高原尾瀬口駅[8:53着]
    京成157円+株主優待券780円+野岩鉄道1,090円
 
バス:会津高原尾瀬口駅[9:40発]-
   -あずき温泉バス停手前 三岩岳登山口[10:54着]
    会津バス1570円
 
徒歩:三岩岳登山口[11:10出]-無線中継所の小ピーク[11:33着]-
   -ポイント899[11:57着]-ポイント1308[13:33着]-
   -ポイント1699[15:29着]-ポイント1816[16:04着]-
   -三岩岳避難小屋[16:12着] 避難小屋泊
 
4/18(木) 晴れ
徒歩:三岩岳避難小屋[3:38出]-三岩岳[4:32着/4:39出]-
   -ポイント2060[5:05着]-ポイント2057[5:24着]-
   -コル ポイント1918[6:00着]-大戸沢岳[7:00着]-
   -ポイント2098[7:40着]-会津駒ヶ岳[8:15着/8:30出]-
   -駒ノ小屋[8:45着]-ポイント1990[9:05着]-
   -登山口[11:08着]-国道401号線[11:45着/12:00出]-
   -尾瀬の郷 交流センター[12:15着](昼食)
 
バス:道の駅尾瀬桧枝岐バス停[13:09発]-会津高原尾瀬口駅[14:40着]
    会津バス1770円
 
電車:会津高原尾瀬口駅[15:20発]-押上駅-京成高砂駅[19:45着]
    野岩鉄道1590円+株主優待券700円+定期券
 

 
2024年、今年の春山は雪が少ない。
例年だと5月の連休でも残雪が残る尾根が、ヤブ漕ぎの方が多いのではないかという人もいる。
 
三岩岳から駒ヶ岳の尾根には一般道はない。
以前から残雪の時に歩きたいと考えていた。
天候と、2日間の休みとが合致したこのタイミングで、その願いは叶えられた。

 
 
4月17日(水)
 
まだ夜が開けぬ朝5時前、地元駅で始発電車に乗る。
今日は晴れ、風も無い。絶好の山日和になると、この時は予測していた。
 
東武線に乗換え、車窓からぼんやり眺める田んぼには水が張られ、田植えが始まっている。
道端の菜ノ花の黄色も、田園風景に春を感じさせる。
桜が満開だ。日光市内は、今が春だ。

 
東武線の終点 新藤原駅で野岩鉄道に乗り換える。
ここでは季節が逆戻り、新緑もまばらになり、花もまだ蕾だ。
 
野岩鉄道は半分以上がトンネルだといわれている。
県境の山王峠のトンネルを抜けると野岩鉄道の終点、会津高原尾瀬口駅に到着する。
やっと福島県に入った。

 
この駅も、尾瀬の登山シーズン意外は観光客も少ない。
平日だったこともあり、下車したのは二人だけだった。
 
改札を出て階段を降り、バス停にザックを降ろす。
土産物店「憩の家」で、家へのお土産を事前調査しておく。
カミさんが好きな「ゆべし」と、山菜の天ぷらに合う蕎麦に決める。

 

 
バスは早めに来た。乗り込んで運転手さんに、バス停ではないが登山口で降ろして欲しいと頼む。
出発を待つうちに、雨が降り出しフロントガラスを濡らす。
 
自分一人を乗せたバスは、定刻9時40分に出発する。
 
中山トンネルを抜けると、雪を残した山が見え始める。
バスは途中、七ヶ岳の麓、たかつえスキー場に寄り道する。
その手前、井桁バス停を通過する。井桁とうふは、シャッターが閉まっていた。
店じまいしたのか心配になる。
店の脇の駐車場には、赤いトヨタ86が停まっていた。

 
バスは折り返し、国道に戻る。
下り坂だからフロントガラスに正面の雪山が広がる。燧ではないだろうか。

 
バスは山間の民家をつないで走る。
高畑スキー場を過ぎると民家も途絶え、山の谷間を縫うように走る。
 
あずき温泉バス停の少し手前でバスを降りる。
三岩岳の登山口を示す国体コースの看板がある。

 

 
バスを降りるとすぐに会社の携帯が鳴った。
仕事の電話で、気が滅入る。
 
気を取り直し、11時10分、重いザックを背負い出発する。
茶色いブナの落葉が敷き詰められた急な斜面を登る。

 

 
20分程で無線基地局がある小ピークに着く。
天気は曇り、風が肌寒い。

 
道の脇には可憐なピンク色のイワウチワが満開だ。
他にもシャクナゲやブナが多い。

 

 
その先、緩い尾根を進むとポイント899に着く。
そこはモミの木の間から雪の三岩岳の東の斜面を臨める。
岩場が黒く、雪とのコントラストがきれいだ。
風が強くなり、もの寂しいが、鳥の鳴き声が励ましてくれる。
この先も緩い登り尾根が続く。

 

 
歩き始めて1時間、急登の手前に着く。ここで一本取る。
急傾斜の道にはロープが掛かっている。
道は、真っすぐ青空に向かっているようだ。

 

 
20分ほど登ると一旦平坦になり、やっと雪が現れる。
落葉に残った雪は滑りやすく歩き難い。

 
徐々に雪が増え、標高1080メートルからはもう土は見られなくなる。

 
1時間ほど急な斜面を登ると、平坦な広い尾根になる。
左手(西側)には三岩岳、右手(北側)には家向山が見える。
その間には、窓明山があるが、ここからは尾根に隠れて見られない。
残雪が増えてくる。ツリーホールを見ると積雪は50センチぐらいだろうか。
日差しまぶしい。

 

 
こんもりとしたポイント1308を通過すると狭いコルになり、その先でまた登りが始まる。

 

 

 
この後も登りが続くので、せっかく持ってきたスノースーを付ける。
登りにはヒールアップ機能がありがたい。

 

 
登りは長いが、振り返る南の景色が良いので癒やされる。

 
ひたすら登る。

 

 

 

 

 

 
標高1540メートル付近で、大きなカバの木が折れて倒れていた。
折れた幹を見ると半分ボクになっていた。
折れた木はやがて朽ちて、また樹々の栄養となって新しい子孫の糧となる。
自分もそうありたい。

 
その先も、まだ登りが続く。

 

 
標高1600メートルには少しブッシュがあって、ここから尾根の向きが変わる。
三岩岳の岩は見えるが、山頂はガスに隠れている。
風のせいか、それとも気温が下がってきたのか、肌寒くなってきたので雨具を着る。

 

 

 

 

 
標高差100メートル登るとポイント1699だ。
この先でやっと傾斜が緩み、シラビソやモミの樹が多くなる。

 
樹々を縫うように進む。
踏跡はあるが、尾根が広いのであちこちに踏跡があり、コースを間違わないよう注意する。

 
西に傾いた日差しが尾根と同じ角度で差してきた。

 

 
標高差1000メートルがきつかったのか、寝不足のせいか、足がきつくなった。
そんな気持ちで歩いていたら、黒い屋根が見えた。
三岩避難小屋だ。

 
入口が塞がっていたら、スコップで掘らなければならないと思っていたら、小窓の前が除雪されていた。
中に入る。誰もいない。
入口のドアは雪に埋まっている。他の窓も埋まっていて真っ暗だ。

 

 
残置の銀マットを敷いて今夜の寝場所を作る。
 
きれいな雪を袋に詰め、さっそく水作りから始める。
今夜の夕食は、早ゆでマカロニにガーリック味のパスタソース。
そしてアルファ米の五目ご飯だ。
最近、このパターンが多い。

 
避難小屋にはよくあるノートがここにもあった。
以前(2021年9月)三岩岳から窓明山へ馬蹄型に歩いた時、ここに泊まってノートに一言書いたのが残っていた。
 
ページをめくっていくと驚いたことに、山田さんの書き込みがあった。
去年の5月、自分が今回計画したコースの逆を歩いたようだ。
さらにその年の秋にも、自分が3年前に歩いた馬蹄型のコースを逆歩いたようだ。
次のページには、愛車2CVで来れなかった理由が長々と書かれていた。
 
まったくビックした。
 
夜はよく眠れなかった。体は疲れているのに。
原因は小動物が板の間を駆け抜ける足音だ。
「カタ、カタ、カタ」
ネズミかヤマネくらいの小動物だろうか。
食料やシュラフをかじられたらいやだ。
起きてライトを点け、声を出して威嚇しても、10分もするとまた「カタ、カタ」と。
2、3回それを繰り返すとこっちが根負けして、日付が変わったころ眠りについてしまった。
 
 
 
4月18日(木)
 
2時に起き、袋麺の塩ラーメンを作る。
 
今日、早出したのには訳がある。バスの時間だ。
コースの長さから駒ヶ岳まで5時間、下山に3時間と読んだ。
バスは13時7分。そのあとは15時42分、できれば13時のバスで帰りたい。
だから早起きをした。
 
3時半過ぎ、まだ暗い中をライトを点け、スノーシューを履いて出発する。

 
避難小屋を出てシラビソの林の中、ライトを照らし雪原の斜面を登る。
斜面は広く、踏跡いくつもあり迷う。
コンパスと地図を信じて南南西に進む。

 
薄明るくなると、稜線の近くにいた。左手が三ッ岩だ。

 
避難小屋を出て50分、稜線にの乗る。風が強い。
稜線からは、背の低いダケカンバの中を進む。
左前方には、駒ヶ岳への稜線が見渡せる。
左手の下には、大戸沢側は雲に埋まていた。

 
平坦な稜線を進むと山頂が見えてきた。
4時32分、三岩岳 2065.2メートルの山頂に到着。
まだ薄暗く、風が少しある。
雲は低く垂れこみ、東の雲が、ほんの少しオレンジに色付いている。

 

 

 

 
山頂で写真を撮ったら駒ヶ岳に向けて先を進む。
山頂の西の端までは平らな稜線を進み、そこから下りにかかる。

 

 
下りになると、その先、残雪の稜線が見渡せる。すばらしい景色だ。
大戸沢岳から先、駒ヶ岳は低い雲に隠れている。

 
広いコルまで下る。
左手(南側)の沢への斜面は雪で一杯だ。
太陽は顔を出さないが、東の空だけ暖色になる。

 
振り向いて三岩岳

 

 
ポイント2060の登り

 
5時を過ぎてポイント2060に着く。
沢の音、鳥の声が心地良い。

 
その先は、次のポイント2057まで平坦な稜線が続く。
快適な残雪歩き。

 
振り返れば三岩岳の山頂が見える。
その右に太陽が顔を出した。最高の景色だ。
これだから、春、残雪の山はやめられない。
やっぱり山は朝早くが良い。

 

 

 

 

 
緩い傾斜を少し登り、5時半少し前、ポイント2057に着く。
稜線は狭くなり、南面の雪庇は崩れ大きく口が開き笹原を見せている。
風が強くなり、太陽も雲に隠れてしまった。

 

 

 
ポイント2057からポイント1918のコルまで標高差100メートルほど下る。

 
途中で陽が差してくる。天候が回復する兆しだ。

 

 

 

 

 

 

 
崩壊が始まった雪庇を除け、少し樹林の中を歩く。

 
6時、ポイント1918のコルに着く。
振り向くと、下ってきた稜線の崩壊が始まった雪面が春らしい。
この先、日に日に雪庇が切れ、どこもかしこも緑の斜面が見えてくることだろう。

 

 
コルから、大戸沢岳に向けてシラビソの林の中を登る。
ただの雪原も良いが、樹林の中も変化があって良い。
シラビソは、登るにつれだんだん背が低くなる。

 

 

 
傾斜が緩み、ピークかと思ったら偽ピークだった。

 
次に高いと思ったところもピークではなかった。
向こうの方が少し高そうだ。

 
7時、大戸沢岳 2098メートルの山頂に到着。
山名板などは無い。
駒ヶ岳までの3分の2を歩いた。

 
西に、駒ヶ岳への稜線が見渡せる。
駒の山頂だけが雲に隠れている。
標高の低い中門岳の稜線は見える。

 
(振り向いて、左:三岩岳、右:大戸沢岳)

 
左手(南側)は雪の斜面、右手(北側)は樹林帯と、非対称はこの山域の特徴だ。
そして樹木は凍てつく氷点下の風に耐え、背が低く風下にか枝がない。

 
左手(南側)の雪庇は崩壊が始まり、大きな亀裂に注意しながら歩く。

 
7時40分、ポイント2098に到着。
中門岳のような高層湿原の稜線も、今は1メートル以上の雪の下だろう。

 
ポイント2098と通過すると、正面左、尾根の下に駒ノ小屋が見る。

 
陽が昇ってきたからなのか、それとも黄砂の影響か、駒ヶ岳までの稜線が黄ばんで見える。

 
さあ、駒ヶ岳までのビクトリーロードを歩く。
いつの間にか山頂の雲は晴れ、青空も見える。
山頂の向こうには、尾瀬の燧ヶ岳が春霞の中に見ることができる。

 

 

 

 
最後の登り、ピークの先は青空だ。

 

 
8時15分、駒ヶ岳 2132.6メートルの山頂に到着。
山名が彫られた丸太は、半分以上が雪に埋もれている。

 
しばし山座同定を楽しむ。
南の山はガスで見えない。
西は、大津峡峠、燧ヶ岳に延びる雪の稜線が見える。

 
北には、中門岳に続く尾根。
その右には、窓明山からつながる丸山岳への稜線も見える。
その向こうの会津朝日岳は、霞で判別できない。

 

 

 
東を見れば、今朝歩いてきた三岩岳までの稜線が朝日を浴びてきれいに見える。

 
下山路の駒ノ家への尾根は、スキー場のゲレンデみたいにきれいな蛇行を画いている。

 
駒ノ家の手前で、登山者3人とすれ違う。
みんな日帰り軽装で、早いペースで登っていく。

 

 
8時45分、駒ノ小屋に到着。
もちろん今はクローズ。小屋開けは4月下旬だろうか。
北西からの風を受け、小屋の南東は雪で埋まっている。
ここからは一般道を下るが、もちろん夏道は雪の下。
何人ものトレースがあるので、それを信じて下る。

 
駒ノ小屋から山頂を振り返る

 
小屋を過ぎてからも2名の登山者、樹林帯に入ってからも3名の登山者とすれ違った。
自分は、5、60リッターのザックを背負っているので、すれ違う人みんなどこから来たのと聞いてくる。

 
ポイント1990を通過したあたりで樹林帯に吸い込まれる。
あとは長い雪の下り。
朝からずうっとスノーシューを履いたまま。
下りも、行けるところまでスノーシューで下る。

 

 

 

 

 
10時半ごろ、かなり下った標高は1480メートル付近で、スノーシューを外す。
この先も、時々雪が残っていて、滑りやすく難儀した。

 
「国民の森林・国有林」も看板に着いたら登山口は近い。

 
11時過ぎ、登山口の階段に着いた。
ここから林道を下る。

 

 
途中、駐車場を除雪作業がされていた。
山はこれからがシーズンだ。

 
途中、フキノトウがたくさんあったので、少し分けもらった。
翌日、天ぷらにして、土産物店で買った蕎麦と一緒に食べた。
 
林道を30分ほど歩くと、黄色いテープが見えてきた。
簡易なゲートだ。
11時45分、国道の手前、トイレに着いた。
水道があったので、ここで靴の汚れを落とす。
念のため、トイレは冬季クローズだ。

 
国道に着くと、すぐ前に駒ヶ岳登山口のバス停がある。
そして日帰り温泉を紹介する案内板もある。
ただし、シーズン前は閉まっている可能性があるので事前確認が必要だ。
この時も、アルザの湯は閉まっていた。

 

 
今朝、早起きして出発した甲斐があって、予定より1時間早く到着できた。
そこで食事をしたいと考え、以前食べたことのある蕎麦屋に向かう。
途中で地元の方に「截ちそば まる屋」のことを尋ねる。
しかし、シーズン前でやっていないかもとのこと。
代わりに紹介してもらったのは「尾瀬の郷交流センター」。
それは反対方向だ。
ザックの重さで肩が痛かったが、我慢して歩く。
 
15分ほどすると、その建物と目の前のスキー場が見えてきた。

 

 
「尾瀬の郷交流センター」は新しい建物で、食事処はお昼時で混んでいた。
メニューも豊富だ。
蕎麦はうちに帰って食べるので、お奨めの天重をいただいた。

 
「尾瀬の郷交流センター」の前が「道の駅尾瀬檜枝岐前」バス停だ。
時々車が通る以外なにもない。
風の音、鳥の声、沢の音、それだけだ。
 
13時9分発のバスは遅れてやってきた。
 
会津高原尾瀬口駅の手前には、日帰り温泉「夢の湯」がある。
しかし、今日は、のれんが仕舞われていた。
どこもシーズン前は休みのようだ。
 
接続する電車は、15時20分発のリバティ浅草行き。
土産物を買う時間を見越したようなタイミングで駅に着く。
リバティには、特急券が不要な新藤原駅まで乗って、あとはいつものように普通電車で帰った。

 
【編集後記】
 
山小屋のノートは、おもしろい。
山田さんの書き込み、山の好みが似ていいるとはいえ、偶然過ぎる。
びっくりである。
 
山に2CVで来られなかった理由がおもしろい。
地蜂がキャブレター内に巣を作り、エンジンが掛からなくなったからだ。
 
 ( ^^) _旦~~  
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